リーマン球面上の正則写像からなる、写像の合成を積とする半群(これを有理半群という)の、「リーマン球面上での力学系」と、「生成系に付随する歪積の力学系」、「付随するランダムな複素力学系」などを研究した。具体的には、有理半群のなかで、特に多項式で生成された「多項式半群」で、臨界値集合が有界なクラスについて詳しく研究し、そのジュリア集合の持つ著しい特徴を調べた。特に、ジュリア集合全体には、囲む、囲まれる、という順序が全順序になることを示し、このことを様々に応用した。また、有限生成多項式半群のジュリア集合の連結成分の個数は、全ての自然数と可算の濃度になりうることを示した。この研究の際、関連する確率過程であるランダムな複素力学系をも詳しく調べた。各ランダムジュリア集合は、通常の力学系では現れないような特徴を持ちうることを示した。また、無限遠点に飛んでいく確率の関数が、半群のジュリア集合の上だけで変化するような、複素平面上の連続な「特異関数」になることを示し、その関数の微分可能性、微分不可能性、ヘルダー連続性、各点ヘルダー指数、などを詳しく解析した。また、上のクラスにおいて、二元生成で双曲性を持つものの空間を考え、その研究を行った。臨界値集合が有界な多項式半群の研究の一部については、アメリカ・Ball State UniversityのR.Stankewitz氏と共同研究を行った。さらに、有理半群のジュリア集合のハウスドルフ次元について、アメリカ・University of North TexasのM.Urbanski氏と共同研究を行った。また、2006年8月にスペインにて行われた国際数学者会議に出席し、研究を深めた。さらに、2006年8月に行われたトポロジーシンポジウムにて研究成果を発表し、2006年9月の日本数学会函数論分科会において上記の研究に関して特別講演を行った。これらの研究成果発表では購入したノートパソコンでコンピュータグラフィクスを示したり詳しく内容を述べた。
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