本研究課題の準備段階において、3次元ユークリッド空間内の極小曲面の内、種数Oでn個の懸垂面型の端を持つ、いわゆるn端懸垂面において、各端対に対して相対ウェイトを定義した。この相対ウェイトにより、曲面が退化する直前の様子を記述した定理をいくつか得た所で、本研究課題を開始し、18〜19年度は、まず、上記の定理を用いたn端懸垂面の非存在条件の分析の精密化を行い、また、3次元ローレンツ空間内の極大曲面についても、その特異点集合上に位置する単純な端に関する制約条件を分析し、3個の単純な端のみを持つ種数Oの極大曲面の分類を完成するとともに、4個の単純な端のみを持つ種数Oの極大曲面の一般的存在を示した。 それに引き続き今年度は、3次元ユークリッド空間内の種数1のn端懸垂面(コスタ曲面や種数1のジョージ・ミークス曲面などの重要な既知の例を含むクラスである)において種数Oの場合同様に行った定式化を元に、新しい例を構成し、シェーンによって与えられた非存在条件を満たすような方向への変形によって曲面が退化する様子を観察した。また、種数Oの場合についても、これまでの研究に続いて、n端懸垂面全体の空間や分岐条件の相対ウェイトを用いた記述を行い、特にn=4の場合については、分岐解の個数の上からの評価も得た。また、3次元ローレンツ空間内の極大曲面についても、nullなフラックスを持ち、二重曲面に退化する新しい例を構成した。これらの研究成果については、現在、論文を準備中である。
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