研究分担者 |
大谷 光春 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30119656)
田中 和永 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20188288)
中島 主恵 東京海洋大学, 海洋科学部, 助教授 (10318800)
久藤 衡介 福岡工業大学, 工学部, 専任講師 (40386602)
大屋 博一 佐世保工業高等専門学校, 専任講師 (70409647)
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研究概要 |
本年度は拡散項を伴うLotka-Volterra型の数理生態学モデルを題材にして,交差拡散(cross-diffusion)項を伴う反応拡散方程式系に対する正値定常解集合の解析をおこなった.同一の領域で生存競争する2種の生物の個体数密度をu,vとする.自然界ではそれぞれの生物種の拡散効果は,自他それぞれの種の個体数密度に関係する,と考えるのが自然である.このように考えると個体数密度u,vの変化は交差拡散項を含む方程式系 u_{t}=Δ[φ(u,v)u]+au(1-u-cv), v_{t}=Δ[ψ(u,v)v]+bv(1-du-v) によって与えられる.このモデルは1979年に,生物の棲み分け現象を記述するシステムとしてShigesada-Kawasaki-Teramotoにより提起された.以来,非定常問題の大域的可解性,定常解集合の構造の解明などのテーマが数学的に重要な未解決問題として多くの研究者の関心を集めてきた.本研究では,同次Dirichlet境界条件のもとで,いかなる十分条件のもとで正値定常解が存在するか,について写像度理論と分岐理論の両方の観点から満足すべき成果を得ることができた.とくに,適当な係数を分岐パラメータとすると,分岐の方向と安定性の関係について準線形のケースでも納得できる結果を得ることができた.さらにある種のprey-predatorモデルについて,交差拡散の係数を無限大に近づけたときの極限問題を導出し,これに対する正値定常解集合を解析することにより,本来の問題について興味ある情報を引き出すことに成功している.これらの成果はChipot教授編纂のHandbook of Differential Equations, Stationary PDEsに発表予定である.
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