研究概要 |
申請者等は、2002年9月と2004年8月のすばる望遠鏡主焦点観測(狭帯域フィルターによる輝線銀河探索)によって発見したSSA22(22h17m,+00°15')領域の赤方偏移z=3.1(宇宙年齢約20億年)大規模構造の諸性質について、観測的研究を行なっている。平成17年度にはこの大規模構造周囲の銀河分布を広範囲(約200Mpc×160Mpc)に調べることを目的として、すばるインテンシブプログラム(17夜観測、代表研究者:山田亨)が採択され、同年10月に計画の90%の観測(主焦点カメラ撮像及びFOCAS分光)を達成した。平成17年度後半に行なった準備解析に基づき・平成18年度は本課題によって整備した計算機環境(3テラバイトハードディスク等)を活用して、主に撮像データの画像処理・サイエンス解析を行なった。その結果、上記大規模構造(長さ100Mpcスケールの輝線銀河高密度領域)の周囲には、数十Mpcスケールのボイド(輝線銀河がほとんど存在しない領域)や新たな大スケール銀河高密度領域が存在することを明らかにした。上記インテンシブプログラムでは対照領域として、SXDF(すばる・XMMニュートン衛星深探査領域)、SDF(すばる深探査領域)等においてz=3.1狭帯域フィルター探索を合わせて行なったが、それらと比較してSSA22天域z=3.1は、探査領域全体(約200Mpc×100Mpc)に亘って輝線銀河密度が非常に高い(対照領域の約2倍)ことを明らかにした。このように大きな領域に亘る高い密度超過は、標準構造形成モデル(CDM重力不安定性理論)によっては容易に説明できないものであり、構造形成標準シナリオに対する重要な問題提起であると考えられる。(これらの初期結果を平成18年9月の天文学会(九州国際大学)において発表。)
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