研究概要 |
本課題の研究目的は次の(A)(B)(C)から成る。(A)SSA22天域赤方偏移z=3.1に発見されたライマンアルファ輝線銀河(LAE)の大規模構造(C.C.Steidel et al.2000, T.Hayashino et al.2004)周囲を広く探査、宇宙年齢20億年(z=3.1)なる初期宇宙におけるLAE空間分布の特徴を明らかにする。(B)多数の一般領域のLAE探査を行ない、これと比較することによりSSA22 z=3.1領域のLAB数密度超過を明らかにする。(C)分光観測によってLAE高密度領域の3次元構造を明らかにする。 このような目標に対し申請者等は2006、2007年において、すばる望遠鏡2005年度インテンシブプログラム(代表者:山田亨)により取得したデータを解析、上記目的をほぼ達成する以下のような結果を得た。(1)長さ2億光年の上記大規模構造を中心とする2平方度(すばる主焦点カメラ7視野)に亘る狭帯域フィルターサーベイにより、z=3.06~3.12のLAEを略2000個検出、体積6億光年×3億光年×2億光年の探査領域中に新たなLAE大規模構造を発見、更に直径2億光年に及ぶボイドを発見した。(2)一般領域計1.5平方度について同様のz=3.1狭帯域サーベイを行ないLAE数密度を比較、大スケール銀河高密度領域を有するSSA22領域は、一般領域(対照領域)の約2倍もの数密度を持つことを明らかにした。ボイドも含むこのような巨大な領域がかかる高い数密度を持つ確率は標準的構造形成モデルでは極めて低く(10^<-8>程度)、新たな観点での宇宙の構造形成・銀河形成プロセスが必要とされると考えられる。(3)SSA22探査領域中央の大規模構造に沿って約200個のLAEを分光、3次元マップを作成し、大規模構造中のLAEがフィラメント状に分布することを明らかにした。 今後、更なる拡大サーベイにより新たな構造を捉えることが期待される。また狭帯域探査では調べられなかったz=3.1高密度領域(大規模構造)前後の構造(z=2.8~3.5等)について、深い分光探査が望まれる。
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