宇宙の進化にわける第一世代の星、すなわち、重元素を含まない種族IIIの星がどのような質量関数を持っていたかという問題は、現在の天文学の焦点の一つである。本研究は、この第一世代の星の質量関数あるいは典型的な質量を、銀河のハロー星などの宇宙の進化の初期に形成された天体の化学組成を説明する試みによって、精度よく推定することを目的とした。この研究期間において、SN2006ajとよばれることになった極超新星が新たに観測され、その結果が本研究課題に関連して重要なデータを提供すると考えられた。そこで本研究を平成19年度にまで延長して、この極超新星の解析を重点的に進めた結果、次のような新たな知見が得られた。 1.SN2006ajの解析によって、この極超新星は、ガンマ線バーストの中でも、X線フラッシュという種類のバーストであり、その爆発エネルギーは、それまで知られていたガンマ線バーストに付随した極超新星より、やや小さいことがわかった。また、爆発物中に酸素が少なく、爆発した星の質量は太陽の20倍程度であること、従って、爆発のエネルギーはブラックホールではなく、中性子星の中でも特に磁場の強いマグネターと呼ばれるものであることも推測できた。極超新星はの典型的な質量が太陽の20倍程度にまで小さくなるという結論が得られた。これは、研究期間の延長によって得られた重要な結果である。 2.上記結果も含めて、宇宙初期の超新星における元素合成計算を太陽質量の13-50倍の質量を持つ星について行い、観測されている極端な金属欠乏星の元素組成の特徴と比較した。私たちのモデルでその元素組成の特徴がうまく再現できることを示し、その元素生成量テーブルを提出した。第一世代の星が典型的には、太陽質量の10-100倍程度の質量を持つということを示唆することができた。
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