研究概要 |
国立大文台との共同研究として同野辺山宇宙電波観測所構内に設置してある60cm電波望遠鏡は昨年度までに受信機の換装を終え、従来を大幅に上回る性能を発揮することが確認されたので、これを用いた銀河面サーベイを開始した。この結果、昨シーズンより、感度・サンプル点数・サンプル密度の全てに渡って過去のサーベイデータを上回るデータを得ることができた。本年度は、観測域を銀緯方向に広げると共に、昨シーズンまでに取得したデータを解析し、銀河円盤部での分子雲の性質についての特徴を調べた。その結果、過去のサーベイでは観測点数が不足していた4kpcリングより内側について、CO(2-1)/CO(1-0)輝線強度比が、より外側の傾向とは異なり、中心に近づくほど減少する傾向を示すことを明らかにした。また、これまでのデータでは観測感度の限界から判別不能であった、同一動径距離のサンプルの中での比の違いを限定的ながら調べることができた。その結果、輝線強度や強度比自体を識別条件に用いて2つに分割したサンプルについて、それぞれの動径分布が異なることを発見した。いずれの基準でも渦状腕に属すると期待されるサンプルの方が動径による比の変化が少なく、過去に見出された比の動径分布は腕間に広がる強度の低いガスが示す傾向であることが明らかとなった。これらの結果は、今後、さらなる解析を進めて論文発表する予定である。 昨年に引き続き鹿児島6m鏡によるNH_3輝線による銀河中心の観測も進めた。本年度は観測輝線を(3,3)輝線に拡張し、CMZの特異性を分子ガスとダスト温度の観点からより追求した。こちらも新たな論文を執筆中で近々投稿予定である。
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