研究概要 |
2005年に我々が発表した論文(Inutsuka & Sano 2005,ApJ 628,L155)では、正のフィードバック・プロセスが働いて、磁気乱流状態での準定常的なエネルギー散逸が電離度を上げる効果をもたらし、原始惑星系円盤内で磁気乱流状態が継続することを示唆した。そこでは、電流を担う電子の分布関数を求める際に弾性散乱のみを考慮して解析的な手法を用いているが、より正確な計算をするためには、励起や電離によるエネルギー損失を考慮した計算を実行する必要がある。その結果、電離源の強度ζが分かれば、密度nで割った値(ζ/n)の関数として、化学反応のネットワーク計算に従って種々の荷電粒子の存在度が正確に決定できる。まずはそのような詳細な解析を行うことからはじめる必要がある.また、電離度を決定するには、MHD乱流状態での磁場の飽和値を定量的に決定する必要があるので、電離と再結合を簡単化してモデル化したMHDシミュレーションも実行し、首尾一貫した解析を行う必要がある。その結果として、現実的な円盤内での電離度の分布を明らかにし、どのような乱流状態分布になるかを解明するためである。また、磁気乱流状態の円盤内ではガス粒子とともに塵粒子も複雑な乱流運動を行う。この効果を考慮して塵粒子の合体・成長・沈殿過程を解析することが重要である。そこで、私は、塵粒子にはSPH法的な粒子法を用い、ガスに対してはメッシュを用いたMHD計算法を用いるというハイブリッド計算法のデザイン作りに取り組んだ.塵粒子の集団の運動を記述する運動論的方程式を解くには6次元の位相空間でのSPH法を開発すれば良い。粒子数を多く必要とする計算になるため、高速の計算機が必要であるが、この目的のためには、専用計算機ボードであるGRAPE6ボードを導入し,劇的な効率化に向けて研究を続けている。また,これとは別に,乱流中におけるさまざまなサイズの塵粒子の拡散現象について研究し,拡散係数等を乱流のパラメータの関数として解析的に求めた.
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