1.相対論的ジェットの内部構造の基準モデルとして、開口角の大きい準相対論的な流れの中を相対論的速度のジェットが噴出しているというモデルを設定し、以下の検討を開始した。 (1)ジェット中の磁場の向きと観測される偏光ベクトルの向きの関係が相対論的運動によってどう変化するか。 (2)ジェットの見かけの構造が、ジェットの縦方向および横方向の構造をどう反映するか。 この二つの点はこれまでの観測の解釈で深く検討されては来なかったが、いずれも相対論的運動の効果が大きいことが判明した。より検討を進めて、最終年度に取りまとめる。 2.内部構造が非一様性を含む場合、フレア時に放出された光子のエコーが起こりえること、これによりいくつかのブレーザーで観測されたOrphan TeVフレアを説明できることを論じた。 3.ジェットのX線放射機構としてこれまでシンクロトロン放射と逆コンプトン散乱が考えられてきたが、非常に小さなスケールの磁場が存在するときにはジッター放射も寄与しうることに着目して検討を開始した。 4.衝撃波による電子加速過程を検討した。従来の一次元シミュレーションでは波乗り加速が起こるとされてきたが、二次元シミュレーションでは波乗り加速が起こらないことを示した。 5.マックスウエル分布をした二つのプラズマ成分が相対速度を持って運動している場合の、クーロン衝突によるエネルギーと運動量の交換率を計算し、ジェットの力学の数値計算に使用できるような近似式の作成を行った。
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