研究概要 |
銀河団の熱的状態・進化を調べる目的で,初期に自己相似性を持つモデル銀河団の進化をシミュレーションし,放射冷却に伴って,銀河団は小さなコア半径の重力平衡分布へと推移して行くことを明らかにした.しかし,クーリングフローのような大規模なガスの中心部への流入は起きず,銀河団形成時の密度・温度によって決まる固有の冷却時間スケールまで,静水圧平衡を保ちながら緩やかに質量分布が変わっていくことが分かった.一方,比較的大きなコアをもつ銀河団では,コア半径とビリアル半径の間に自己相似性が見られ,放射冷却が未だ効いておらず,重力コラプスによる形成時の特性が残されていると解釈される. シミュレーションから得たコア半径分布は,観測されている分布の基本的な特徴である〜60kpcと〜220kpcの2つのピークを再現することを示した.しかし,〜220kpcピークの裾に広がるコア半径>400kpcの少数の銀河団を,シミュレーションでは再現し得ないという結果も得た.このことは,単一の銀河団の熱的・力学的進化では説明できないことを意味しており,銀河団の合体など大規模な進化の過程を経た可能性が示唆される.実際,これらの銀河団では,放射冷却時間スケールが宇宙年齢より十分長い一方で,自己相似性が失われていることを示した. 以上の結果から,銀河団の合体が放射冷却の抑制に大きく働いていると考え,衝撃波によるガスの加熱,粒子加速について予備的な研究を行った.銀河団-小規模銀河団(銀河群)衝突に伴う衝撃波はマッハ数が大きく,銀河団周縁部で高エネルギー粒子加速が期待されるが,コア部のガスに対する熱的な影響は小さい.一方,銀河団-銀河団衝突の衝撃波はマッハ数が小さいが,準熱的粒子を生成してガスの熱的放射に影響する可能性があることを示した.
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