現在までに開発してきた並列計算機上で効率的に動く自己重力多体系と自己重力流体系が混在した系のハイブリッドシミュレーションコードAFD2を使用してシミュレーションを実行した。星やダークマターは自己重力多体系として取り扱う一方で、ガスなどの流体系に関してはAUSM-DVというメッシュ法の有限体積法をベースにしたスキームを採用している。今年度は、スピンパラメータ0.04で標準LCDMの2σの密度揺らぎを考え総質量10^<11>M。の原始銀河の計算を行った。計算コードは3次元流体力学に加えて、重元素量に依存した放射冷却関数を用いた放射冷却の効果とガス、星、ダークマターの自己重力、ガスから星への星形成、II型超新星爆発による熱エネルギーと重元素の放出の効果がインストールされている。星形成のアルゴリズムは、現在までに採用してきたものをそのまま使用した。超新星爆発を導入するに当たって、星の初期質量関数を仮定する必要があるが、本研究全体を通してSalpeterの関数を採用することとした。超新星爆発による重元素ならびに熱エネルギーは対応する各流体格子点に源泉関数として与え、その後は流体力学及び熱力学の方程式にしたがって変化する。計算は、ダークマターの密度揺らぎが最大膨張半径に到達した赤方偏移からはじめ、そのなかで小さな密度揺らぎが成長し、やがて星を形成し、銀河を形成していく様子を調べた。 その初期成果を、2006年7月にLyon(フランス)で開催された国際会議「CHEMODYNAMICS」で発表し、関係する研究者と詳細な議論を行い、多くの知見を得ることができた。また、8月から9月にかけてカリフォルニア大学ロサンゼルス校(アメリカ合衆国)のRich博士を訪問し、本研究の初期成果を報告した。そして、シミュレーションデータと、彼が取得した銀河観測データとの直接比較について慎重に検討した。
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