シミュレーションの実行は順調に進んでおり、計算データが蓄積されるとともに、その解析も進んでいる。特に、並列計算機上で効率的に動く自己重力多体系と自己重力流体系が混在した系のハイブリッドシミュレーションコードAFD2を使用して、ダークマターの密度揺らぎが成長し、やがて星を形成し、銀河を形成していく過程において、小質量銀河の合体過程を詳細に調べている。矮小銀河の衝突現象が星形成率に及ぼす影響や力学構造の変化について詳細に検討した。さらに、その応用として近傍銀河で観測された、矮小銀河の衝突合体現象を再現することに成功した。ここで得られた知見をもとに、原始銀河での矮小銀河の衝突合体現象をとりいれたシミュレーションを行っている。 また、夏期休暇を利用してカリフォルニア大学ロサンゼルス校天文学教室においてライマンアルファエミッターの観測可能性に関する研究打ち合わせを行った。具体的には、ライマンアルファエミッターとライマンアルファブロッブで観測されているライマンアルファ輝線の等価幅と天体サイズの関係から、その進化経路の情報を引き出す試みについて具体的なその方策について詳細に議論した。また銀河形成初期で発生する重元素やダストの非一様な3次元分布中でどの程度の電離光子が吸収され、また、系外へ放出されるかは極めて重要な問題である。現在、本研究課題の重要なテーマであり筑波大学との共同研究である、銀河形成時に放出される電離光子が、どの程度宇宙再電離のプロセスに寄与するかについて、最新の研究成果を報告した。
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