研究概要 |
非可換空間が実現している唯一の観測可能な系は量子ホール系である.電子がランダウ準位に束縛されているため,そのx座標とy座標は交換しない.電子の生成演算子は点電荷ではなく広がった電荷を生成する.さらに,実際に生成するのは,より広がった電荷分布を示すトポロジカル・ソリトン(非可換スカーミオン)である. さて,2層量子ホール系で,横磁場が進入するとサインゴードン・ソリトン(SG)格子ができる.本研究の目的は非可換スカーミオンとSG格子の散乱過程の研究である.本年度は低エネルギー有効理論を用いて,この散乱効果を異常縦抵抗の測定によって観測し得ることを示した.研究成果は強相関物理国際会議(May, Houston, USA)と2次元電子系国際会議(July, Genova, Italy)で発表した.尚,最近,この異常縦抵抗は私の属する実験グループで観測に成功した.その成果は米国学会誌Phys. Rev. Lett.に掲載された.代表的な原著論文は項目11の研究発表に記載している. 有効理論における電子とSG格子の散乱が分かったので,来年度は,非可換幾何学を用いた微視的理論の構築を行う計画である.
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