本研究では、「実験室で定常な粒子からインフレーション宇宙を作れるか?」という問題に取り組み、インフレーション宇宙論、ブラックホール物理学、量子重力理論の検証と進展を目指している。今年度の研究成果は次の2つである。 1 磁気モノポールから宇宙を作る新しいプロセスの発見 磁気モノポールの古典的及び量子的ダイナミクスを解析し、ある条件を満たす定常なモノポールは、外部からエネルギーを加えることにより、或いは量子トンネリングによって自発的に、無限に膨張するインフレーション宇宙になることを発見した。この成果が米国のPhysical Review誌に掲載されると、欧米の科学雑誌数社から取材があり、そのうち英国のNewScientistではA.Guth(MIT)の推薦でトップ記事として紹介され、その中でA.Linide(Stanford)等の研究者から高く評価されている。 2 非位相的ソリトン(Qボール)の基本的性質の解明 多くのU(1)スカラー場で現れる非位相的ソリトン解(Qボール)について解析し、安定性やダイナミクス、重力の効果等の基本的性質を明らかにした。その中で、重力の効果が大きくなるとインフレーションが起こるという先行研究は誤りで、多くの場合にブラックホールになることが明らかになり、実験室で宇宙を作るモデルとしては否定的な結果であった。しかしながら、宇宙のバリオン生成やダークマターを説明するモデルとしては有力で、宇宙論的に重要な結果と言える。この成果は日本物理学会や国際会議「一般相対論と重力」等で口頭発表された。
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