1.超対称性理論に基づいたインフレーション宇宙では重力を媒介する重力子のパートナーであるグラビティーノが存在し、それがインフレーション後の再加熱時に熱的に作られ深刻な宇宙論的問題を引き起こすことが知られている。このグラビティーノ生成に関し、新たに非熱的な生成過程を考慮した。インフレーションを起こすスカラー場(インフラトン)から直接グラビティーノが大きな分岐比で生成されることを指摘し、その効果は熱的にグラビティーノが生成される場合と異なり、再加熱温度が低いときに大きな効果があることを発見した。このことからインフレーション宇宙モデルに強い制限が得られることを示した。 2.宇宙初期の元素合成におけるヘリウムの生成量に対する観測的制限を精密化するために、系外銀河のHII領域におけるヘリウムの存在比の再解析を星による吸収を考慮して行い、従来の解析に大きな系統誤差があることを指摘した。再解析の結果、従来よりも大きなヘリウムの存在比量が推定され、これは、宇宙背景放射の結果とも一致することが分かった。
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