相転移の視点から、宇宙物理の境界領域をつなぐ統一論を追及していく1年目の結果の概要です。宇宙における相転移が多彩に展開していく可能性を見出しました。各階層における詳細は以下のとおりです。 【暗黒エネルギーと暗黒物質の凝縮宇宙モデル】我々が提唱している新しい宇宙モデルの基礎を築いた。特に今までは暗黒物質が一様に分布している場合に限って解析してきたが、非一様性モードの不安定性と凝縮体の崩壊を議論した。解析的計算でも数値計算でも、0.003eVという特徴的なボゾン質量スケールが得られた。また、崩壊に伴う特徴的なスケールがその質量に大きく依存することなどを見出した。 【量子-古典相転移】今までに我々が解析してきた、量子測定と自発的対称性の破れの議論がかなり一般的に成立しそうだということがわかってきた。モデルをスピンの系に限定して、測定過程の相転移に着目して、量子測定の4要素(エンタングルメント、デコヒーレンス、プロコヒーレンス、対称性の自滅)を得た。もっと一般的な対称性を持つ系に対しても我々の解析の有効性が示唆された。 【自己重力系の秩序構造の普遍性】今までの我々の研究で、自己重力系に特徴的な「局所ビリアル関係」の起源を、自己臨界組織化と捕らえられることがわかりつつある。特に、再規格化することによって普遍的な速度分布関数が得られ、これを元に蒸発率が一様という基準を適用すれば局所ビリアル関係を導けることを示した。 【フェルミオン場凝縮相転移と銀河団回りの暗黒物質】 宇宙におけるフェルミオン凝縮の可能性として、A1689銀河団の周りの暗黒物質をニュートリノ凝縮と結び付けて議論した。観測結果を再現するフェルミオン質量パラメターとして、ニュートリノ質量に近い値が得られた。このモデルでは、特に中心で密度分布がフラットになることが予言されるが、観測でもそれに近い特性があることがわかった。
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