研究概要 |
1. 昨年度までに整備した9台のパソコンからなるPCクラスタに、今年度新たに最新の4コアCPUを備えたPCを7台追加して、さらに大規模に、あるいは短時間で数値計算を遂行できるようにシステムを整備した(PCの購入には校費を併用した)。新しいCPUに合わせた最適なコンパイル方法を調査した。 2. 自作の正準基底HFB法プログラムにクーロンカを付け加える作業を進展させた。 3. 当初の研究目的を補完する相補的なアプローチとして、KUTY質量公式(Koura et al., Nucl. Phys. A674, 47 (2000))で提唱された「変形核は球形核の重ね合わせで表現できる」という仮定を取り入れた平均場模型を提唱した。この模型においては、球対称性を課された対相関を含まない平均場解のみを用いて、変形し対相関のある原子核の基底状態のエネルギーを求めることができる。主たる研究目的のひとつである「一粒子状態空間の連続スペクトル部分空間での対相関を含む任意の形状に変形した平均場解を求めること」のために克服すべき2大困難である「連続状態」と「変形」がこのアプローチには全く出現しないことに注目すれば、この新しい手法と正準基底HFB法とで結果を比較することに大きな興味が持たれる。このテーマに1年間の研究エフォートの過半を費やした理由には、大学院修士課程の学生の修士論文のために主たる研究目的とは独立した課題に取り組む必要があったという副次的な理由もあるが、主たる理由は、中性子過剰核に関する研究として、本筋の研究の厚みを増すことである。
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