時間依存正準基底HFB法の理論的一貫性に関する考察を進めた。さらに平均場法と相補的な関係にある殻補正法での中性子過剰核の扱いについて重要な発見をしたので、その発表を優先して約1年を費やして長編の論文を執筆し現在投稿目前の段階にある。出版次第、研究成果発表報告書(様式C-24)で報告する。 殻補正法を並行して研究した理由は以下の通りである。最近Skyrme密度汎関数法を究極の現象論と喧伝する研究者が多いが、その密度汎関数は究極どころか局所密度近似による従来通りのものばかりであることから、困難の打開のため現象論性が求められる今、むしろ一昔前の殻補正法こそが有望であると考えた。しかし殼補正法では特に中性子過剰核の扱いが困難であった。原因は連続状態の効果の取り入れ方にあり、それはまさに本研究の正準基底HFB法で解決できる課題であったのである。 殻補正法に関して成し得たことは以下の通りである。 1.有限な調和振動子基底で連続状態の効果を取り入れるためのKruppaの処方の本質を明らかにした。 2.Strutinskyの平滑化法を新しい視点で見直しNilsson模型においてプラトーの発達する機構を明らかにし、逆にWoods-Saxonポテンシャルにおいてはプラトー条件を追求することの無益なことを示した。 3.平滑化パラメータ依存性を減ずるために参照密度法という手法を開発した。 4.殻補正法においても平均場法の持つような微視的部分と巨視的部分の首尾一貫性を可及的に実現することの重要性を指摘し、球対称でスピン軌道結合を無視したThomas-Fermi近似でフェルミ準位を調節するという簡易な方法で一貫性がほぼ実現できることを多数の核図表計算により実証した。 5.連続状態の効果を取り入れる方法としてKruppa-BCS法を開発した。
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