本研究の目的は、高次元時空に基づいて素粒子の性質や法則を解明することにより標準模型を超える現実的な理論を発見し、宇宙の謎を解き明かすことである。研究計画のその1は、Orbifold Family Unification Models(高次元時空に存在する1つの多重項から3世代の物質粒子の大部分が導出される模型で2006年度に我々が提案)を検証する手段の提案である。具体的には、超対称性の破れの起源と考えられる隠れたセクターからの量子効果が無視できない場合を想定して、前年度に行った解析を拡張した。その成果として、多くの場合、スーパーパートナーの質量の間の関係式を使って模型の取捨選択が可能であることが分かった。関係式は、近い将来、実験により実証される可能性がある。研究計画のその2は、高次元時空上の理論からstrong CP problemの解決の糸口を探ることである。具体的には、5次元時空上のMixed Chern-Simons termを有するSU(3)c×U(1)ゲージ理論に基づき、θパラメータの値が5次元のゲージ変換の下で不変に保たれることを確かめた。その成果として、θパラメータの値は境界条件と解釈され、strong CP problemの解決のヒントになる可能性が生まれた。研究計画のその3は、統一理論などに基づき宇宙の誕生や進化に関する謎に挑むことである。具体的には、その足がかりとして、Z_3オービフォールド上の場の境界条件の分類を行った。さらに様々なコンパクト空間に対する場の境界条件とその性質を探究することにより、宇宙のトポロジーの解明に役立つ可能性がある。
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