本研究の目的は、「ローレンツ不変性の破れを許す重力理論」としてのスカラー・ベクトル・テンソル重力理論の枠組みで、宇宙のダークエネルギー、ダークマター、インフレーション理論等の諸問題を解決する可能性を探求することにあった。 我々は、インフレーション理論へのローレンツ不変性の破れの影響に関する研究を行い、研究の過程で力学的な機構による過渡的なローレンツ不変性の破れを発見した。この予想を遥かに超えた成果をさらに発展させることに成功した。 以下、具体的な成果をまとめる。 (1)ローレンツ不変性を破ることで繰り込み可能な重力理論が構築できることがHoravaに指摘された。我々は、このような理論ではパリティー対称性が一般には破れているということに着目し、この理論における原始重力波の円偏光の観測によって理論の検証を行うことができることを示した。 (2)我々は、インフレーション中にスカラー場と結合したベクトル場が存在する場合に非等方的インフレーションが起きうることを発見した。そのような非等方的な膨張宇宙における宇宙論的摂動理論の構築に成功した。非等方インフレーションモデルにおいて、宇宙背景輻射の温度揺らぎと偏光の揺らぎの相関や揺らぎの統計的非等方性を計算することに成功した。これは、今後の観測計画にとっても重要な成果である。
|