超弦理論を構成的に定義することによって、例えば格子ゲージ理論におけるように、いろいろな物理量が少なくとも原理的には可能な数値計算によって求まるようにし、重力まで含めた究極の統一模型を構築することを目的として研究を進めた。 本年度は大別して次の2つのことを追求した。ひとつは、行列模型と超弦理論の対応をゲージ重力対応の立場から再構築する試みである。具体的には、いわゆるゲージ重力対応が拡張されたスケール不変性の帰結として自然に成り立つことを示し、任意次元において行列模型と超弦理論が対応していることを示した。これは、ゲージ重力対応もIIB行列模型に内包されていることを示しており、大変興味深く、今後も追及していくつもりである。 もうひとつの試みは、昨年当研究代表者により発見された、IIB行列模型の真空として10次元のtypeIIA理論が現れるメカニズムをさらに発展させることである。まだ最終的な結論には達していないが、これが完成すれば、IIB行列模型が確かに超弦理論の構成的定式化になっていることの証明となるだけでなく、large-N極限のとり方を具体的にきめることができ、非常に興味深い。現在、以上のように行列模型と超弦理論の関係を調べているが、この方向の理論が完成した暁には、宇宙初期の時空構造をはじめ、今までの理論では考察できなかった時空の根本的構造にせまることができるようになると思われる。
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