研究課題
基盤研究(C)
原子核におけるパイ中間子の役割をカイラル対称性のあるラグランジャンを使って理論的に研究を行った。原子核においては平均場近似でのこれまでの計算をパリティーと電荷の射影を行う計算に拡張した。まずはHe4の計算では全エネルギーに対するパイ中間子の役割が充分に大きいことと、原子核の半径や構造因子は定量的に再現できることをしめした。C12ではp3/2の軌道まで核子が詰まっている。この時にはs1/2の核子はp1/2とパイ中間子で強く混合するし、p3/2の核子はd3/2とパイ中間子で強く混合する。このことにより、この原子核ではパイ中間子の役割は非常に大きい。ところが016になるとp1/2の軌道まで核子が詰まっていることにより、s軌道のパイ中間子相関はブロックされる。このことにより、パイ中間子の効果は半減する。さらに重い原子核になって行くと、深い軌道から順にパウリ効果でプロッキクングがおこり、結局は表面にある軌道だけが寄与することになる。この表面にある軌道だけが寄与することが興味深い現象を引き起こす。即ち、jj閉核の方がLS閉核よりパイ中間子の寄与が大きくなり、マジック数の効果を引き出すことが分かった。即ち、jjのマジック数はパイ中間子が引き起こすことになる。一方で、表面だけのパイ中間子の役割だけでは十分な引力は得ること出来ない。このことは、パイ中間子の取り扱いの際に球形近似を使っていたことによることも判明した。今後はこの近似を外して定式化する方向に研究を始めた。カイラル対称性の破れがパイ中間子を生み出す。この状況を定量的に表現するには真空でのフェルミオンの寄与を考慮する必要がある。このフェルミオンの寄与は非常に大きいことが判明した。これを克服するためにはボソンの寄与も同じ枠組みで計算する必要がある。フェルミオンと同じように真空の取り扱いをする方法を開発した。その上で、カイラル対称性の破れの要請を行うと、カイラル対称性に伴う物理量は満足すべきものを得ることができるごとを示すことができた。さらには、フェルミオンとボソンの真空の寄与はほとんど打ち消し合うことが分かった。これらの内容は現在投稿中である。
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すべて 雑誌論文 (11件)
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