研究概要 |
宇宙のマクロで静的な骨格は、重力で形成されている。しかしミクロで動的な側面、例えば元素合成、に目を向けると、以外にも弱い相互作用の働きが大きい事に目をみはる。特に超新星爆発時のような過激な状態での、ニュートリノ起源の元素合成メカニズムの解明に注目が集まっている。恒星進化論では、質量が太陽の10倍を越える星は、最後に超新星爆発を起こし、その寿命を終えると考えられている。元素合成のシナリオによると、鉄より重い(質量数の大きな)ウランまでの元素の起源は、相当部分がこの超新星爆発に求められており、宇宙空間で起こる最も重要な出来事の一つである。 ニュートリノ起源の元素合成においては、pf-殻核からのフェルミ遷移、ガモフテラー(GT)遷移が重要な役目を果たすが、ニュートリノが関わる弱い相互作用それ自身を使う実験から得られるこれらの遷移に関する情報は、相互作用の弱さゆえに非常に少ない。一方強い相互作用を使う荷電交換反応において、(1)中間エネルギーの入射ビームを使う、(2)散乱角度0度での実験を行う、事によりGT遷移が選択的に励起される事がわかり、研究可能なエネルギー領域が大幅に広がった。更に本研究では、(3He,t)反応と磁気分析器を用いた高いエネルギー分解能の研究を行い、GT遷移の詳細をしらべている。 アイソスピンT=1のpf-殻核42Ca、46Ti、50Cr、54FeからGT遷移を調べ、その遷移強度を決定した。42Caでは低励起状態に集中していた遷移強度が、原子核の質量が大きくなるにつれ、励起エネルギー8-10MeVのいわゆる巨大共鳴領域に移動していく様子が観察された。超新星の高温状態では、この高励起状態への励起が重要となる。原子核物理としての面白さと共に、上記宇宙物理のシナリオを裏付ける為の重要な知見である。
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