研究概要 |
宇宙のマクロで静的な骨格は、重力で形成されている。しかしミクロで動的な側面、例えば元素合成、に目を向けると、以外にも弱い相互作用の働きが大きい事に目をみはる。特に超新星爆発時のような過激な状態での、ニュートリノ起源の元素合成メカニズムの解明に注目が集まっている。元素合成のシナリオによると、鉄より重い(質量数の大きな)ウランまでの元素の起源は、相当部分がこの超新星爆発に求められており、宇宙空間で起こる最も重要な出来事の一つである。 ニュートリノ起源の元素合成においては、pf-殻核からのフェルミ遷移、ガモフテラー(GT)遷移が重要な役目を果たすが、ニュートリノが関わる弱い相互作用それ自身を使う実験から得られるこれらの遷移に関する情報は、相互作用の弱さゆえに非常に少ない。一方強い相互作用を使う荷電交換反応において、(1)中間エネルギーの入射ビームを使う、(2)散乱角度0度での実験を行う、事によりGT遷移が選択的に励起される事がわかり、研究可能なエネルギー領域が大幅に広がった。更に本研究では、(3He,t)反応と磁気分析器を用いた高いエネルギー分解能の実験を大阪大学・核物理研究センターで行い、これらpf-殻核からのGT遷移の詳細を調べる研究を続けている。 更にGT遷移研究を不安定核からの遷移にまで広げている。2008年9月に、仏国GANIL研究所で58Znのβ崩壊の研究を行った。このβ崩壊の研究では、長年にわたり(3He,t)反応で調べ続けてきたpf-殻核である58NiからのGT遷移と、荷電スピン(Isospin)対称なGT遷移の情報が得られた。
|