研究課題
基盤研究(C)
本研究では、電子ビームの縦方向位相空間(時間-エネルギー)での分布を電子バンチごとに高速測定するための手法を開発している。今年度は、大阪大学産業科学研究所のLバンド電子ライナックのFELビーム輸送路中に、可視遷移放射(OTR : Optical Transition Radiation)の光量と分解能を評価するため金属板を仮設し、CCDカメラにより測定した。測定されたOTR画像を処理して得られるエネルギースペクトルでは、従来から用いられてきたスリットとファラディーカップを用いた運動量分析装置よりも高い分解能を有することが確認できた。他方、その光量は20MeV以下の電子ビームではきわめて微少で、直接ストリークカメラにより時間分解することは困難であることが判明した。そのため、電子ビームが空気よりも屈折率の高いエアロジェル通過するときに発生するチェレンコフ光を光の発生源とすることが可能かどうか試験を行った。このときは電子ビームをビーム窓から大気中に取り出し、厚さ10mmのエアロジェルに入射した。結果は良好で、空気によるチェレンコフ光を発生することができない20MeV以下の低エネルギーの電子ビームでも十分な強度の光量を得ることができた。これを用いて電子ビームの縦方向位相空間測定実験を行った。ビーム輸送路中の運動量スリットを狭めて、偏向電磁石の磁場を掃引し、エネルギーごとの時間プロファイルを取得して、これを再構成することにより、縦方向位相空間分布が得られることを実証した。この結果を踏まえて、さらに時間分解能を向上させるために厚さ1mmのエアロジェルを準備するとともに、ビーム調整用の蛍光セラミック板と金属板+エアロジェルを遠隔操作で切り替え・真空中への出し入れができるような可視遷移放射発生装置を設計・製作した。
すべて 2006
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Proceedings of the 28th International Free Electron Laser Conference, BESSY, Berlin, Germany
ページ: 676-679