本年度は、従来の低エネルギー有効模型の拡張、特にカラー閉じ込めを考慮した有限温度密度カイラル相転移の解析、及び、宇宙の構造変化の記述に必要であると考えられる非平衡熱場の量子論の相対論的場の量子論の数値解析を主な目的に研究を進めた。 1.強結合ゲージ理論に対する低エネルギー有効模型の解析 前年度までの研究では強結合ゲージ理論の有効理論として4体フェルミ相互作用模型を利用して対称性の動的破れと時空の構造についての解析を進めた。今年度は得られた結果を一般化し適用限界を探るため、より高次元の演算子によって記述される多体フェルミ相互作用、及び、カラー閉じ込めを考慮したポリヤコフループの寄与を含むNJL模型に関する相構造とその正則化依存性について調べた。結果については、国際会議、学会等で報告、また、多体フェルミ模型と4体模型の相構造の違いに関して論文にまとめた。 2.広い範囲の極限状況と非平衡過程取り扱い処方の開発 開発した非平衡Thermo Field Dynamics(TFD)による相対論的場の量子論における非平衡過程の取り扱い方法を、湯川相互作用模型、φ^4相互作用模型に適用し、数値解析を実施した。新しい処方による試みであり数値解の安定性等、課題はいくつか残っているが、単純な初期条件に対する場の配位の時間変化に関する解析を行い、学会で報告した。 上記の他、前年度までの研究成果をまとめた論文の発表、国際会議での報告を通じ、今後の研究の方向について、他の研究グループと議論、検討した。
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