本研究課題最終年度となる本年度は、昨年度までの研究成果を推し進め有効理論の一般化と非平衡過程の取り扱いについて以下の成果を得ると共に、実施した研究を論文に取りまとめ、広く国際会議、学会、研究会等で報告した。 1. 有効理論の一般化 昨年度から進めている対称性の破れに対する高次元演算子の寄与について、曲率の効果とトポロジーの効果、及びを温度、化学ポテンシャルの効果についての系統的な解析を実施し、2次相転移点の高次元演算子で記述される相互作用に対する安定性、8体フェルミ相互作用による1次相転移の出現とその起源等を明らかにした。曲率とトポロジーの効果則については正則化の問題も含めた議論を行い論文にまとめ、温度、化学ポテンシャルの効果については学会で発表している。また、ポリヤコフループにより閉じ込めの効果を取り込んだ模型について、次元正則化を用いて温度と化学ポテンシャルの寄与を解析し、正則化依存性を中心に学会、研究会で発表した。 2. 非平衡過程の取り扱い処方の解析 昨年度までの研究でThermofield Dynamics(TFD)による相対論的場の理論における非平衡過程を取り扱う上で必要となる熱的条件を導くまではできていたが、誤差の問題等により、数値解析できるパラメータが狭い範囲に限られていた。本年度は、昨年度までの研究で利用していた質量殻近似等の近似法を全面的に見直すことで、質量殻上にない効果の取り込み等に成功し、数値解析の適用範囲を広げる事に成功した。また、開発した処方を自発的対称性の破れの簡単な模型であるφ^4模型に適用し、自発的対称性の破れが引き起こす質量生成に伴う非平衡過程の数値解析を試みた。得られた研究成果については、学会、国際会議で発表した。
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