銀河の大規模サーベイを用いたダークエネルギーの検証に向けた研究を行い、最終年度は次の成果をえた。 (1)SDSS・LRG銀河分布の多重極スペクトル解析を実行し、赤方偏移歪みの定量的な測定を行った。この結果、密度揺らぎの線形進化を表す(γ)パラメーターを20%程度の統計誤差で測定することができた。このパラメーターは宇宙論スケールの重力理論の検証において重要な役割を果たす量で、一般相対性理論と整合性のある測定結果であった。この方法を用いてこれまでに拡張重力理論として提案されているDGP重力模型が観測的制限を受けることを示した。この成果は、銀河分布の赤方偏移歪みを測定することで、重力理論の検証が可能であることを新しく実証するもので、今後の大規模赤方偏移サーベイに対する重要な示唆を与える結果となった。 (2)暗黒エネルギーを含めた模型の理論予言の精密化として、物質密度揺らぎのパワースペクトルにおけるバリオン音響振動の減衰の研究を行った。具体的には、密度揺らぎの摂動理論の高次項の寄与を計算し減衰を表す表式を解析的に導出して非線形効果による減衰を明らかにした。またN体シミュレーション結果と比較し、解析的な理論表式の正しさを示した。この解析的なアプローチによって、この減衰が物質分布の密度揺らぎの振幅とどのように結びついているかが明らかになり、その測定によって物質分布の密度揺らぎの振幅を測定できる可能性を指摘した。さらに、フィッシャー行列解析法を用いて、将来の観測プロジェクトにおいてバリオン音響振動の減衰の測定から揺らぎの振幅の測定がどの程度測定可能かを定量的に明らかにした。 (3)また、SDSS・LRG銀河分布のパワースペクトルから取り出したバリオン音響振動に減衰が見いだされることを示し、理論予言と観測データとの整合性を実証した。成果はファジカル・レビュー誌に掲載された。
|