本研究の目的は、QCD(量子色力学)に等価な5次元重力理論モデルを現象論的につくることにある。これまでに、5次元重カモデルを真空および有限温度系に対してそれぞれ提案した。昨年度より、有限密度における5次元重力モデルを構築するという最終目的に向けて、有限密度QCD自身の研究を開始した。第一原理計算である格子QCDが有限密度系では適用できないため、有効模型として有名なNambu-Jona-Lasinio(NJL)モデルを拡張したPolykov-loop NJP模型(PNJL模型)に注目した。今年度は、格子QCD計算が可能な純虚数密度系に着目し、PNJL模型の結果が格子QCD計算の結果を定量的に再現することを示し、PNJL模型の妥当性を確認した。このとき、PNJL模型の結果が格子QCD計算の結果を定量的に完全に再現するには、スカラー型8点相互作用とベクター型4点相互作用が必要であることを示した。このPNJL模型を実数密度系に適用して、実数密度系のQCD相図の予測を行った。これによって、実数密度における5次元重力モデルを構築するのに必要な情報が準備できた。
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