我々の研究の主な成果は、初期宇宙での新しい幾何学的なインフレーションモデルの発見である。これはアインシュタイン重力理論へ、以前から知られていた量子論的超弦理論の補正を考慮することに基礎を置いている。その補正の最初の項は時空の曲率で言うと4階になっているが、4次元時空での構造を詳細にみてみると、本質的にはベル・ロビンソンテンソルの2乗で与えられている。我々はFRW宇宙モデルでその高階微分項を持つ一般化されたフリードマン方程式を導き、それが厳密にインフレーションを生成する(ド・ジッターの)厳密解を持つことを発見した。また、この超弦理論に由来する4次の曲率項について、量子論的不定性、安定性、そしてスケール因子双対性から課される制限などを系統的に調べた。我々の方法は時空の曲率の高次項からくる量子重力補正に一般化できるものである。我々が提案したインフレーション・シナリオは完全に幾何学的で、新たなスカラー場(インフラトン)やスカラー・ポテンシャルを必要としないものだが、現実的なインフレーションのための膨張指数を得ることは未解決問題として残っている 我々はまた、ある2+1次元の超対称非線形シグマ模型に、もともとそれを記述しているグラスマン奇の超空間座標がなすグラスマン代数をクリフォード代数に置き換えるという非反可換変形を施し、新しい厳密な多重ソリトン解を見つけた。その変形で新たに加わるスピン1/2 の自由度を持つ、静的なCP(1)と散乱しているU(2)ソリトンを詳細に計算した。アーベル的BPSソリトンの存在は確かめられたものの、それはモヤル積の場合と違い作用が無限大である。さらに、我々はC変形または非反可換化と呼ばれる手法で、4次元ユークリッド空間上で一般の物質場を持つN=1/2超重力理論を、初めて系統的に定式化した。物質場を持つN=1/2超重力理論は、還元と切詰めによって、N=2超共形テンソル計算を使って構成した。この結果は、N=1/2しかない局所超対称性を持つ「極小」超重力理論で、全ての素粒子と重力を非標準的に統一するための理論的基礎を与えたともいえる
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