重力理論では特異点としてしか記述されないブラックホールを、量子重力理論としての超弦理論がそのミクロな状態を記述するという研究が近年盛んに行われている。弦理論のソリトンが非常に重くなった極限では、ブラックホールができるのだ。本研究では、時空対称性を明白に持つ定式化を用いて反ド・ジッター時空上の弦とブラックホールのダイナミックスに関する物理の解明を目標としている。反ド・ジッター時空上の弦の理論は可解系であることが示唆されており、本年度の秋の日本物理学会・第62回年次大会ではその可解系の特徴についての研究結果を報告した。それは、反ド・ジッター時空のある種の近似的な時空上の弦の量子論を考えると、可解性と弦理論の特徴であるT-デュアリティの性質が互いに等しい保存量を与えることを示した。この性質を一般化するためには、T-デュアリティをうまく表す形式が必要で、今回私達はcourant括弧を用いたDouble vielbein形式を提唱し、具体例としてNappi-Wittenの弦モデルを検討した。 また"Superconformal spaces and implications for superstrings"という論文では、反ド・ジッター時空上の超弦理論はsuperconformal(超共型)対称性とも解釈でき、その表現の方法を高い超対称性がある場合の理論を構築するために応用した。これは、Physical Review D誌に掲載された。
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