研究課題
基盤研究(C)
超対称性理論の予言するニュートラリーノや余剰次元理論の予言するカルツァークライン粒子のようなWIMP暗黒物質は、対消滅や崩壊の過程でガンマ線や電子・陽電子を生成することが計算されている。本研究では、これらの二次粒子の中でも、特に電子・陽電子成分に着目し、宇宙線中の電子・陽電子成分の観測によるWIMP暗黒物質検出の可能性を検討した。WIMP暗黒物質を起源とする単一エネルギーの電子・陽電子は、100GeVからTeV領域のエネルギーを持つと期待されている。しかしながら、これまでに観測されている100GeV以上の宇宙線電子・陽電子観測データは不十分であり、ECCによる観測がほとんど唯一であった。このためPPB-BETSによる観測データを解析し、最終的な100GeV-1TeV領域の宇宙線電子+陽電子エネルギースペクトルを導出した。また、宇宙線電子+陽電子の到来方向を世界に先駆けて初めて求めることに成功し、等方的な到来方向と矛盾しないことを示した。100GeV以上の宇宙線電子+陽電子の現在までの観測結果を説明するためには、WIMP暗黒物質の寄与がなくても統計的には説明可能であるが、WIMP暗黒物質の対消滅により発生する電子、陽電子が存在すると仮定すると、エネルギーは890GeV、エネルギーフラックスは6.5×10^<-2>E^<-2>(m^<-2>s^<-1>sr^<-1>GeV^<-1>)として解釈できる。WIMP質量に相当する電子・陽電子エネルギーは予測の範囲内であるが、フラックスは一桁以上大きく、さらに統計精度の高い電子・陽電子観測が望まれる。このため、宇宙ステーションへの搭載が計画されている宇宙線電子観測装置CALETに着目し、存在が予言されているWIMP暗黒物質から生成される電子+陽電子およびガンマ線が、CALETによりどのように観測されるのかを検討した。その結果から、CALETによる間接観測によりWIMP暗黒物質が有意に検出できる可能性があることを示した。
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