大質量星の進化の最期に起こる重力崩壊は、超新星爆発やガンマ線バーストなど激しい天体現象の引き金であり、その跡に中性子星やブラックホールなどの高密度天体を残すと考えられている。しかし、どのような大質量星が中性子星・ブラックホールの起源となるのかは、爆発メカニズムとともに未だに定かではない。我々は、一般相対論的ニュートリノ輸送流体計算により、長い時間スケールに渡り数値シミュレーションを行なうことにより、星の重力崩壊から高密度天体形成までのダイナミクスを系統的に解明する研究を行なっている。特に、ニュートリノ輻射輸送を厳密に取り扱うことにより、放出されるニュートリノの性質を予測して、ニュートリノ観測による高密度天体誕生のダイナミクスを探ること、高温高密度状態にある極限物質の性質をプローブできることが特徴である。 今年度の研究により、通常の超新星爆発を起こす星よりも重い(太陽の40倍)大質量星の重力崩壊による天体現象の性質が明らかになった。こうした星では、鉄のコアが大きすぎるため爆発を起こす事ができず、降着物質のため原始中性子星の質量が増加して最大質量を超えてしまい再度重力崩壊を起こしてブラックホールとなってしまう。この様な、ブラックホール形成に至る場合のダイナミクスやニュートリノ放出シグナルの特徴を解明することに成功した。ブラックホール形成に至る時間は約1秒であること、超新星ニュートリノのエネルギー・光度が急激に増加することを明らかにした。これらは超新星ニュートリノ(約20秒)とは明確に異なる。さらに高温高密度状態方程式による違いがニュートリノ放出時間の違い(約2倍:バウンス後0.6秒と1.3秒)として顕著に現れることを発見した。これにより、地球上でブラックホール形成ニュートリノを検出することにより、放出継続時間を元に高温高密度物質を探ることが可能であることを確実なものとした。
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