大質量星の進化の最期に起こる重力崩壊は、超新星爆発やガンマ線バースト等の源であり、その全容の解明は宇宙・原子核物理にまたがる重要な課題である。中でも中性子星・ブラックホールの形成過程を解明することが、根本的な問題として残されている。本研究では、大質量星重力崩壊による爆発メカニズム・ブラックホール形成ダイナミクスを理解するため、ニュートリノ輻射流体計算により大質量星の重力崩壊数値シミュレーションを系統的に行ない、コアバウンス・衝撃波伝搬・高密度天体形成・ニュートリノ放出の様子を明らかにする。 今年度は、ブラックホール形成に伴う短いニュートリノ放出現象の性質を用いて、高温高密度物質状態方程式をニュートリノ地上観測で探る可能性についての研究、超新星爆発における衝撃波伝搬の復活メカニズムに関わる磁場の影響・ミクロ物理の研究、を行うため、ニュートリノ輻射流体計算の数値シミュレーションを新たに行ったほか、得られた計算データをもとに現象の分析や新たなシナリオの吟味を行った。ブラックホール形成について、クォーク・ハドロン相転移を考慮した状態方程式を用いた最新シミュレーションにより、クォーク物質の影響がブラックホール形成直前に現れることを発見した。核子・ハイペロン・クォークの自由度全てをカバーする状態方程式データ体系を構築できたと共に、ブラックホール形成ニュートリノへの影響について系統的な解明が行われたことは特筆すべきことである。さらに、ニュートリノ振動の影響を考慮した地上観測施設における検出イベント数の予測計算を行い、この現象がニュートリノ天文学の観測ターゲットとして有力な候補であることを明確に示した。
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