研究概要 |
この研究課題は、これまで格子定式化による非摂動論的研究が不可能とされて来た超対称性理論、カイラルゲージ理論などの格子定式化の可能性を探るものである。一つの具体的対象として、昨年度より、2次元の超対称ゲージ理論を研究して来たが、今年度の成果の一つは、これら2次元の場の理論におけるカイラル対称性の実現に関するある一般的な定理を証明したことである。さらに最も大きな成果としては、時空間2次元のN=(2,2)超対称Yang-Mills理論に対する2種類の異なった格子定式化(一つは鈴木・谷口によるもの、もう一つは杉野によるもの)に対応した数値計算のコードを完成し、実際に数値計算を行ったことが挙げられる。前者の定式化では、質量O状態を含むと考えられる様々な2点関数を測定したが、SN比が悪く、定量的な結論を得るまでには至っていない。この点、今後の課題として残されている。一方、後者の定式化でのコードに対する一つのテストとして、超対称性に付随した様々な1点Ward-高橋恒等式の連続極限を測定し、連続極限での超対称性での回復と矛盾しない結果を得た。さらにこの格子定式化の物理的応用として、数値シミュレーションによって超対称性の自発的破れを観測する手法を開発提案し、実際にスーパーコンピュータを用いて数値計算を行った。2次元のN=(2,2)超対称Yang-Mills理論では、超対称性が非摂動論的効果で自発的に破れるという理論的議論もあり、我々の数値計算結果との比較は大変興味深い。この成果に関しては、現在、論文を投稿中である。また、別の成果としては、ゲージ異常項が存在するようなカイラルゲージ理論(いわゆるanomalous gauge理論)の格子による定式化に初めて成功したことが挙げられる。
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