研究概要 |
通常、電荷のダイナミクスを磁気共鳴で研究する場合、^<14>Nやハロゲン原子を用いNQRを測定することを考えるが、溶液の場合、NQRは測定不可能である。本申請の特色は、選択的同位体置換により特定のサイトの^1Hを^2Dに置換し^2D-NMRを用いることにある。 ^2Dは、I>1/2の核の中で例外的に四重極相互作用が小さく磁場中で信号が検出される周波数はほぼ磁気回転比で決まる。また磁気回転比もそれほど小さくないので検出も容易である。このことは、またフーリエ変換NMRでスペクトルを測定できるという利点を示している。問題は、上記に述べた欠点の(3)で『緩和は、磁気双極子の運動によるものか電荷の運動によるものか区別することが実験的に難しい』ことであるが、1H-NMRでは、緩和は、磁気双極子の運動によるもののみが検出されることに着目すれば1H-NMRにより磁気緩和を検出し、そのサイトを^2D置換することにより磁気緩和+電気四重極緩和を検出する。その違いを調べることにより電気四重極緩和のみを評価するというのが、我々の考えているアイデアである。例えばTetrathiafuluvaleneという分子のHをDに置換し、H, D-NMRを測定し、その緩和時間の違いを調べることにより共役π電子系の電荷のダイナミクスを評価することが可能となる。 この観点より重水素置換体試料の作成を本年度おこなったが予想外にTCNQに重水素化に手間取っている。
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