研究課題
基盤研究(C)
申請時の研究目的は、局在性の強いf電子系の多重極秩序相の共鳴x線散乱の解析に便利な振幅の公式を導き、それを出発点に、以下の4点を遂行することであった。即ち、公式のf電子系への適用、長周期の磁気構造へ公式の拡張、局所的に空間反転性の破れている系での双極子-四極子遷移の解析、共鳴非弾性x線散乱の定式化である。順に成果をまとめる。1.多極子秩序相の典型例である、八極子秩序を示す5f電子系物質に公式を適用した。f電子を直接観測する電気四極子遷移でスペクトル解析を扱った最初の理論研究である。2.長周期磁気秩序相の解析用に公式を拡張することに成功し、典型物質(Ho)へ適用してスペクトル解析を行った。双極子遷移にもかかわらず、4次のサテライト・スポットで散乱強度が観測されることを予言した。これは共鳴x線散乱が中性子散乱と違い、高次ランクの強度の検出に優れていることを示唆する重要な知見である。3.局所的に空間反転が破れている系として、典型物質に対し(マグネタイト)、パリティ奇の遷移に共鳴x線散乱のスペクトルを解析し、実験を包括する結果を得た。4.局在双極子(スピン)の励起が銅酸化物において共鳴非弾性x線散乱で観測できる可能性を理論的に検証し、2マグノン散乱励起のスペクトルの理論計算に初めて成功し、マグノン間相互作用の重要性を指摘した。以上、局在電子系における共鳴x線散乱のスペクトル解析の有用性を示す成果が得られた。成果はほぼ実施計画に沿って得られ、1.4.の成果は論文として出版済み。2.3.の成果は投稿論文準備中。また、全ての成果は物理学会または国際シンポジウムで発表済みで好評を得た。
すべて 2008 2007 2006
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (18件)
Physical Review B 75
ページ: 214414(1)-(9)
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Journal of Physical Society of Japan 75(Supplement)