研究課題
基盤研究(C)
初年度は、本研究の遂行に必要となる試料の作成とその静的性質の評価、および測定系の準備を行った。高次ランダウ準位における1次元電荷密度波状態であるストライプ相は、外部から1次元準周期的変調を加えると、周期的変調に対するものとは異なる応答を示すと考えられる。また、変調を2次元に拡張することにより、2次元電荷密度波状態であるバブル相を誘起出来るものと考えられる。そこで、2次元電子系に、フィボナッチ配列の変調を加えた1次元準周期的平面超格子、および、三角格子の変調を加えた2次元平面超格子を作成し、その低磁場での磁気抵抗測定を行った。準周期的1次元平面超格子では、自己相似な複数世代の平均周期のそれぞれに対応する整合性磁気抵抗振動の観測、および、準周期格子からのブラッグ反射に起因する「開いた軌道」の幾何学共鳴の観測に成功した。いずれも、試料が設計通りに出来ていることを示す結果である。また、変調の長さスケールを短くし電子のフェルミ波長と同程度にすると、変調振幅はフェルミエネルギーの数パーセント程度と小さいにもかかわらず、ゼロ磁場での抵抗が、変調のない2次元電子系の2倍程度にまで大きくなること、磁場を加えると大きな負の磁気抵抗を示すことを見出した。抵抗増大は、準周期格子で許される多数の逆格子点でのブラッグ反射による後方散乱が原因であると考えられる。また、負の磁気抵抗は、これらのブラッグ反射の確率が、磁気ブレークダウン効果により減少していくためであると説明できる。2次元平面三角超格子では、正の磁気抵抗、弱い整合性磁気抵抗振動を観測し、やはり、試料が設計通りに出来ていることを確認した。測定系では、電荷密度波スライディングに伴うノイズの測定、ピン留め中心からの振動に対応するマイクロ波共鳴の実験等に必要となる高周波の測定/導入を可能とするための、同軸ケーブルを備えたプローブを準備した。
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Physics of Semiconductors 2006, Proc. 28th Int. Conf. Phys. Semicond., Vienna, 2006 (印刷中)
phys. stat. sol. (c) 3
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