昨年度赤外反射の圧力依存性を調べたFeMnS結晶についてやりのこしていた高圧力下でX線構造解析を行った。その結果(1)反射率が増加するまさにその圧力領域(15-25GPa)で低圧相のNaCl型中に高圧相が混入して混相状態を形成することが明らかとなり赤外反射測定の結果と良い一致を示した。(2)またこの混相状態は単純な二相の混合状態であり第三の中間相は存在しないこともわかった。ただし高圧相の回折スペクトルはMnP構造に近いもののそれ以外のピークも若干観測されるので具体的な構造は決定することができなかった。またこれまで合成に手こずっていたCrMnSの単結晶試料が2009年になってようやくロシアから到着した。組成分析の結果クロムの仕込み量18%のものが非常に均質であることが明らかになった。予備実験の結果ラマン散乱と赤外吸収測定のいずれも成功の可能性が低いことが判明したのでFeMnSの場合と同じく赤外反射測定とX線構造解析を行った。その結果金属転移圧は若干高めの18-26GPaで起こることが明らかとなった。また得られた格子定数からイオン間距離の圧力依存性を明らかにできた。 測定可能な組成均一度の高い試料が各一種類しかなかったので組成に関しての情報は無いがイオン間距離と磁気的転移や金属転移との関係を総合的に明らかにでき、これらの物質系の超巨大磁気抵抗効果など強相関物性の解明に貢献可能な有力なデータを得ることができた。以上の結果を論文にまとめて投稿し、現在審査中である。
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