研究課題
単層カーボンナノチューブは構造が一次元的であり、一次元性を反映して、鋭いスパイク状の電子状態密度を持ち、バンド間の光遷移は鋭い共鳴を示す。共鳴エネルギーはカイラリティに応じて異なるので、単色のレーザー光を照射すると特定のカイラリティを持ったものだけを励起することができる。このバンド間遷移の鋭い共鳴に付随して、共鳴ラマン散乱が観測される。共鳴準位とフォノンのエネルギーとを対比することにより、共鳴しているカーボンナノチューブのカイラリティをある程度決定することができる。本研究では2つのレーザー光を用いて、共鳴ラマン散乱を変調し、それにより特定のカイラリティをもつカーボンナノチューブの電子状態を、不純物・欠陥状態を含めて、明らかにすることを目指す。本年度、石英またはシリコン基板上に成長したカーボンナノチューブに室温空気中で2つのレーザー光を照射し、片方のレーザー光の波長を変えながら、もう片方のレーザー光による共鳴ラマン散乱測定を行った。その結果、近赤外領域のOPOレーザー光をパルス照射すると、特に半導体性のカーボンナノチューブが減少し、金属性のものが残ることを見いだした。近赤外レーザー光の強度が大きいため、共鳴しているカーボンナノチューブが損傷を受けていると考えられる。強度依存性、波長依存性、時間変化を調べ、新しい知見を得た。本研究成果は、温度依存性や照射雰囲気などいろいろなパラメータを変えて現象を見る研究へも発展が可能であり、それにより、カーボンナノチューブのカイラリティ制御への重要な足がかりとなるものである。
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Physics of Semiconductors, 28th International Conference edited by W. Jantsch and F. Schaffler: AIP CP893
ページ: 1031-1032
J. Physics: Conf. Series 61
ページ: 46-50