研究課題/領域番号 |
18540331
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北 孝文 北海道大学, 大学院理学研究院, 助教授 (20186224)
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研究分担者 |
新井 正男 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算材料科学研究センター, 主任研究員 (40222723)
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キーワード | 第二種超伝導体 / 応答係数 / 非平衡統計力学 / ド・ハースーファン・アルフェン効果 / エントロピー |
研究概要 |
1.パイロクロア超伝導体KOs_2O_6における上部臨界磁場H_<c2>の詳細な研究を行った。この超伝導体では、温度にほぼ比例する特異なH_<c2>が観測され、絶対零度での値H_<c2>(0)は簡単な評価から見積もられたパウリ極限H_pを超えている。まず、この物質では、空間反転対称性の破れによりパウリ常磁性効果が効かなくなっていることを指摘し、上記の特異な磁場依存性を定性的に説明した。つぎに、密度汎関数法により得られたフェルミ面を用いてH_<c2>の定量的な計算を行い、実験との良い一致を得た。 2.超伝導体CePt_3Siでもやはり空間反転対称性の破れがあり、その上部臨界磁場はパウリ極限をこえても飽和しない。このような空間反転対称性の破れた超伝導体の上部臨界磁場を定量的に計算するため、従来の定式化を拡張した。現在、この物質のH_<c2>に対する定量的な計算を実行中である。 3.昨年度に、密度汎関数法を用いて正常金属の磁場応答を計算する手法を開発した。この方法を超伝導体に拡張し、そのド・ハースーファン・アルフェン効果を定量的に解析するための研究を行った。 4.膨張する宇宙、地球上における雲の形成や台風の発生など、自然界は、エネルギーや運動量の流れがある「非平衡現象」や、様々な「パターン・秩序」に満ちている。微視的世界に限っても、電荷密度波や量子渦の運動など、非平衡現象は多彩である。しかし、このような非平衡系を扱う統計力学の一般的手法は未だに確立されていない。この非平衡統計力学の確立に向けて、「エントロピー」に注目した研究を行った。まず、相互作用するボーズ/フェルミ粒子系に対して、非平衡状態における「エントロピー」の表式を導出した。次に、この表式を用いて、非平衡定常状態における「エントロピー最大原理」を提唱した。最後に、パターン形成を伴う非平衡定常状態の典型例であるレイリー・ベナール対流に適用し、この「エントロピー最大原理」が実際に成り立っていることを確かめた。
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