研究課題/領域番号 |
18540337
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森下 將史 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助教 (90251032)
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研究分担者 |
高木 丈夫 福井大学, 工学部, 准教授 (00206723)
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キーワード | 2次元 / 量子スピン / 幾何学的フラストレーション / ヘリウム3 / グラファイト / 多体交換相互作用 / 三角格子 / カゴメ格子 |
研究概要 |
グラファイト上吸着^3He薄膜は2次元量子スピン系のモデル物質である。多体交換相互作用の競合によるフラストレーションの強い特異な系であるとともに、基本的には三角格子構造をとるために反強磁性相では幾何学的フラストレーションも強い系である。このため、反強磁性相は交換相互作用に比べ充分な低温でも、長距離秩序を生じず、スピン液体状態が実現しているものと考えられている。 グラファイト上吸着^3He薄膜の熱容量と熱伝導を0.1〜80mKの温度範囲、0〜600Gの磁場中で測定し、これらが非常に強く磁場に依存することを示した。600G程度の磁場は交換相互作用に比べ1桁以上小さく、この系のフラストレーションが非常に強いことの反映であると考えられる。零磁場中では、交換相互作用より1桁以上低い0.1mKでもスピン自由度の15%程度が生き残っており、これもフラストレーションの強さを示している。また、強磁性的に短距離秩序を生じていると考えられて来た相について、磁場がこの短距離秩序を阻害しており、単純な強磁性相ではない可能性が出てきた。 一方、4/7層と呼ばれる反強磁性相について、吸着第2層の^3He原子の1/4が安定なサイトに吸着し、残りはその間を埋める不安定なサイトに吸着する、新たな吸着構造を提案した。これは、1/4の原子を^4Heに置換することにより純然たるカゴメ格子が実現する可能性を示す。カゴメ格子は三角格子と異なり、古典系の基底状態が多数縮退しており、ゆらぎの影響が強いために絶対零度でも長距離秩序を生じない。1/4の^3Heを^4Heで置換した薄膜の熱容量測定はカゴメ格子の実現を強く示唆し、三角格子に比べ短距離秩序の成長が遅れ、さらにフラストレーションの強い系であることを示している。
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