本研究は、非破壊型ロングパルス磁場を用いた50Tまでの強磁場領域で、金属間化合物磁性体のような良導体試料の微小抵抗変化の検出を可能とし、種々の測定を行うことである。 一般にパルス磁場中の物性測定は、定常磁場より高い磁場が得られる反面、短時間でデータを取り込む必要があるため精度が落ちる欠点を持つ。これまで、パルス強磁場中の電気伝導の研究は少数キャリア系のフェルミオロジーに関連した量子現象や、金属絶縁体転移、酸化物高温超伝導体などで精力的に行われてきた。これらは比較的抵抗率やその変化が大きいか、あるいは高度な薄膜成形技術を応用して試料の抵抗の絶対値を大きくすることで測定を可能にしていた。一方、金属間化合物磁性体の磁気抵抗効果は、f電子系における高濃度近藤効果やd電子系におけるスピンの揺らぎの発現等に関する重要な知見が得られるが、一般に試料の抵抗率自体が小さいことと更にその変化も小さいことからパルス磁場領域で測ることは技術的に困難であり、国内外でもほとんどと言ってよいほど測定実績は無かった。 従来用いられていた4端子法の分解能の低さを解消するのがケルビンダブルブリッジ法である。これは試料と参照抵抗を直列につなぎ、かつ試料の電位差と参照抵抗の電位差の平衡を執り残差を測定するもので4端子法にくらべ高分解能が期待できる。またパルス磁場中での抵抗測定でケルビンダブルブリッジ法が使われたことはこれまで無く技術的にも新しい試みである。 平成19年度はケルビンダブルブリッジによるパルス磁場中(〜52T)・3He冷凍機(0.5K〜40K)での抵抗測定システムの開発を行った。
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