研究概要 |
(1) S=1/2の二等辺三角形スピンチューブの基底状態について詳しく調べた.正三角形スピンチューブではカイラリティが重要な役割を果たすが,それが二等辺三角形になった場合にどうなるかについてはほとんど知られていなかった.我々は解析的理論と数値計算によって,二等辺三角形型の場合について詳細な基底状態相図を得た.この結果は日本物理学会2009年年次大会のシンポジウム講演に選定された. (2) 磁場中の歪んだダイヤモンド型スピン鎖においては,磁場の大きさと量子パラメーターによって格子に整合的なスピン相関と非整合的なスピン相関の優劣が逆転しうることを明らかにした.我々の理論的予言の直後にそれを示唆していると思われる実験結果も発表された. (3) S=1(Niが担っている)とS=2(Mnが担っている)のスピンが交互に並ぶ鎖状磁性体は実際に合成されていて,この系ではスピン間相互作用Jと一軸異方性Dの大小関係を広範囲にコントロールできる.我々は種々の手法を用いてこのモデルを解析し,高スピンの内部自由度を反映した非常に興味ある相図を得た.有限磁場中の磁化プラトーの存在およびその機構についても調べた. (4) 励起ギャップのあるスピン鎖にギャップエネルギーより大きな磁場を印可した場合の磁化の温度依存性に対するランダムネスの効果について厳密に解けるモデルを用いて調べた.用いたモデルは,S=1/2のXY鎖にボンド交替とローレンツ型ランダム磁場が入ったモデルである.励起ギャップとランダムネスのバランスにより,磁化の温度依存性のパターンは複雑な様相を呈し,今まで知られていなかった温度変化のパターンも見出した.同様の現象が比熱についても起こることを初めて示した.
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