研究課題/領域番号 |
18540346
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安井 幸夫 名古屋大学, 大学院理学研究科, 助教授 (80345850)
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研究分担者 |
小林 義明 名古屋大学, 大学院理学研究科, 助教授 (60262846)
佐藤 正俊 名古屋大学, 大学院理学研究科, 教授 (40092225)
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キーワード | 磁気フラストレーション / パイロクロア格子 / 量子スピン / NMR / 中性子散乱 / 磁気相関長 / 磁化率 / 物性実験 |
研究概要 |
磁気的にフラストレートした3次元量子スピン系の基底状態がどのようなものか、また、その低温での磁気的振舞いがどのようなものかは、理論・実験のどの面からも未だ手が届いていない基本的な問題である。申請者らが取り上げたパイロクロア型化合物Hg_2Cu_2F_6SはCu^<2+>の量子スピン(1/2スピン)が頂点共有した正四面体の3次元ネットワークを形成し、また、そのスピン間に反強磁性的な相互作用(磁化率から見積もったワイス温度θw〜150K)が働いていることから、この間題に対する初のモデル物質と考えられる。磁化率と比熱の測定や中性子散乱を行った結果、2Kまで磁気相転移や構造相転移が見られないことがわかり、これは低温まで磁気フラストレーションが残っていることによると思われる。この系の磁気的挙動を詳しく知るために、^<19>F-NMR測定を行った。NMRナイトシフトは十分高温から10OK付近まではキュリーワイス的な振舞を示すが、80K付近でブロードなピークをもち、それより低温では降温とともに急激に減少する振舞を示した。ただし、約30K以下の温度域ではNMRスペクトル幅に急激な増大が見られ、絶対零度に向かってナイトシフト(スピン磁化率)がゼロに向かっているかどうかの判断はつかなかった。また、核スピン-格子緩和率1/T_1の温度依存性の測定結果と、Canalsらの理論的提案を考えあわせて磁気相関長を見積もったところ、降温とともに磁気相関長は少しずつ成長していくものの、十分低温においてもCuの原子間距離程度しか磁気相関長が成長しないことがわかった。これらの結果は磁気フラストレートレーションを持つスピン系の特徴と考えられ非常に興味深い。 上記の測定をした試料では、低温の磁化率にキュリー成分が観測され、また、NMRスペクトル幅の増大が低温で観測されたことから、格子欠陥等によりスピン系が影響を受けていると考えられる。この磁気フラストレーション系の低温でのintrinsicな磁気的挙動を詳しく知るためには、さらなる純良試料の作成が必須条件である。
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