研究課題
基盤研究(C)
磁気的にフラストレートした3次元量子スピン系の基底状態がどのようなものか、また、低温での磁気的振舞いがどのようなものかは、理論・実験のどの面からも未だ手が届いていない基本的な問題である。申請者らが取り上げたHg_2Cu_2F_6SはCu^<2+>の量子スピン(1/2スピン)が頂点共有した正四面体の3次元ネットワーク(パイロクロア格子)を形成し、また、そのスピン間に反強磁性的な相互作用(磁化率から見積もったワイス温度θw〜150K)が働いていることから、この問題に対する初のモデル物質と考えられた。磁化率と比熱の測定や粉末中性子回折実験を行った結果、2Kまでは磁気相転移が見られないことがわかり、低温まで磁気フラストレーションが残っていると考えられる。磁気的挙動を詳しく知るために19F-NMR測定を行った。ナイトシフトは十分高温から100K付近まではキュリーワイス的な振舞を示すが、80K付近でブロードなピークをもち、それより低温では降温とともに急激に減少する振舞を示した。ただし、30K以下の温度域ではスペクトル幅に急激な増大が見られ、絶対零度に向かってナイトシフト(スピン磁化率)がゼロに向かっているのかどうかの判断はつかなかった。核スピン-格子緩和率1/T1の温度依存性の測定結果とCanalsらの理論的提案を考えあわせて磁気相関長を見積もったところ、降温とともに磁気相関長は少しずつ成長していくものの、十分低温においてもCuの原子間距離程度しか磁気相関長が成長しないことがわかった。これらの結果は磁気フラストレートレーションを持つスピン系の特徴と考えられ非常に興味深い。低温域で見られるNMRスペクトル幅の増大は格子欠陥等による乱れの影響と考えられ、低温でのintrinsicな磁気的挙動を知るには、さらなる純良試料の作成が重要である。ただし、わずかな乱れによりスピン系が大きく影響を受けてしまうのは磁気フラストレーション系の特徴であるとも考えられ、この影響を取り除くのは容易ではないと思われる。
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