本年度は以下の研究成果を出した。(1)空間反転対称性のない超伝導においてクーパー対のパリティ混合を検出する方法を提唱した。クーパー対のスピン1重項対-スピン3重項対混合を実験的に確実に検出することを従来の実験手法では難しい。そこで本研究ではcrossed Andreev散乱という現象を利用したパリティ混合の新しい検出方法を提案した。この方法は、クーパー対のパリティが破れていることをダイレクトに検出するものであり、パリティ混合を曖昧無く同定できるという点で優れている。簡単なモデル計算から、このような実験測定によるスピン1重項対とスピン3重項対の混合の検出が可能であることを示した。(2)空間反転対称性のない著伝導、超流動状態におけるトポロジカル秩序の実現可能性を理論的に調べた。ここで考えるトポロジカル秩序状態とは、系の表面や渦糸内部にマヨラナフェルミオン状態を実現するものである。マヨラナフェルミオンは生成演算子と消滅演算子が等しいという際立った性質をもち、それ単独では有るとも無いともいえない奇妙な粒子である。従来の研究ではp波超伝導(超流動)においてこのような準粒子が実現できることが理論的に指摘されていた。本研究では、通常のs波超伝導(超流動)であっても、空間反転対称性の破れによるスピン軌道相互作用と印可磁場が十分大きい場合には、このようなトポロジカル秩序が実現可能であることを示した。また、トポロジカル超伝導(超流動)状態を、冷却フェルミ原子気体で実現するためにスキームについても議論し、その実現可能性を示した。
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