本年度は研究課題の研究の最終年度であり、我々の理論を具体的な系に適用する計算を行った。 1.2次元Hubbard模型における摂動計算を京都大学の池田浩章氏とともに行った。オンサイトのクーロン斥力Uに関して4次まで摂動展開し自己エネルギー、一粒子スペクトルを計算した。この部分は2007年4月に投稿したがレフェリーが交代するなどのトラブルで遅れたが最後の修正を経て出版の段階である。4次摂動の計算で反強磁性揺らぎによる擬ギャップが導かれるなど興味ある結果が得られれた。 2.超伝導状態に関して自己エネルギーと相互作用を斥力Uの4次まで入れる計算は超伝導転移温度を自動的に正しく与えることが確認された。4次摂動の計算の第2段として発表の準備中である。今後、繰り込んだ計算と正確に自己エネルギーのエネルギー依存性を取り入れた計算の比較を行い、繰り込みの方法をマニュアル化したい。 3.更に周期的アンダーソン模型やd-p模型に拡張する予定である。周期的アンダーソン模型の計算として重い電子系の超伝導体CeMIn_5の超伝導をFluctuation Exchange Approximation (FLEX)を用いて研究した。実験に一致する正しいギャップの対称性と圧力依存性が理論的に導出された。これは論文としてJ.of Physicsに発表した。反強磁性揺らぎによってd-波の超伝導かれることがわかった。この計算は今後、重い電子系の超伝導理論の模範となると思う。 4.以前からの研究で異常Hall効果を研究してきたが、最近応用面からスピン軌道の問題(スピントロニクス)として注目されている。その問題を名古屋大のグループと研究し、理論と応用を提案した。 結果として、超伝導転移温度の定量化の目的をほぼ達成した。更に新しい広用問題にも貢献した。
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