研究概要 |
2004年にBauerらによって発見されたCePt_3Siの超伝導は,結晶構造に空間反転対称性がなくてもスピン3重項の超伝導が実現しているかもしれないということで,それまでの超伝導に対する認識に新たな問題点を提起した.平成18年度は反転対称性が破れた物質で発現する超伝導に関する詳細な研究を行うため,CePt_3Siの単結晶試料における詳細な比熱測定を行った. 比熱に現れる反強磁性転移と超伝導転移によるピークは,これまでの結果と比較し最もシャープであった.特に注目すべき点は超伝導状態における残留電子比熱係数聡が約34mJ/K^2molと多結晶試料係(γ_s〜200mJ/K^2mol)に比べ非常に小さくなっており,試料の純良性の向上を示していると思われる.また超伝導状態におけるC/Tは温度に比例する温度変化を示し,超伝導ギャップにラインノードが存在することを支持する結果が得られた.これらの結果は日本物理学会欧文誌に発表した. またCePt_3Siと同様に結晶構造に空間反転対称性を持たないCeIrSi_3の圧力下の物性測定を行った結果,加圧とともにネール温度が減少し,反強磁性が弱まった約1.8GPaから反強磁性が消失したと思われる3.5GPaの広い圧力領域で超伝導を発見した.電気抵抗の温度依存性も興味深く,2.5GPaでは約18Kからフェルミ液体のT^2則ではなく,Tに比例して減少しT_<SC>=1.6Kで超伝導になることが明らかとなった. RRhIn_5(R:希土類元素)の単結晶試料の育成に成功した.磁化容易軸の[001]方向に磁場を印加するとR=Nd,Tb,Dy,Hoで2段のメタ磁性転移が観測された.これらの磁気転移はIsing型磁気交換相互作用を仮定した解析でよく説明されることを明らかにした.
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