研究概要 |
1.本年度は低温クライオスタットが利用できるようになった事から、この装置専用のプローブを製作し、昨年度まで6Kであった最低温度を2Kまで拡大した。その後CeTSi_3(T=Rh, Ir)に対して圧力下での熱電能測定を行った。 CeTSi_3(T=Rh, Ir)は0GPaではそれぞれT_N=1.8,5Kに反強磁性転移を持つ。電気抵抗率ではこれらの異常がきちんと観測されたが、熱電能では一般的な重い電子系化合物で見られる負のピークなどの異常は観測されず正の値を示した。 CeTSi_3におけるRKKY相互作用が強い近藤効果によって抑えられている事が原因と推察される。また高温側では80〜100K付近に結晶場の下での近藤効果による大きな正のピークが観測された。特にCeIrSi_3は50μV/Kという非常に大きな値を示した。 2.3GPaを掛けた結果では、 CeRhSi_3, CeIrSi_3ともに高温の正のピークが高温側ヘシフトし、近藤効果が増強されたことが示唆される結果となった。また、 10K以下では熱電能が増大する傾向が見られた。この圧力下では完全に反強磁性が消失することから、基底2重項による近藤効果のピークが現れる前兆と考えられる。 2.昨年度開発した圧力中比熱・熱伝導率測定の新しい手法(試料の長さを変えた2通りの実験を行う方式)をBi_<0.5>Sb_<1.5>Te_3に適用した。圧力媒体中で約0.3GPaを掛けた状態で試料の比熱110J/Kmol,熱伝導率8.39mW/cmKを得た。これらの値は過去の文献値と比較しても矛盾は無い。これらの値の絶対値の誤差は大体2%程度と見積ることができ、温度変化をさせた時などの相対誤差はさらに小さいことから、この手法が十分に有効である事が分かった。
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